第51回 911 MemorialとStrawberry Fields−大震災から1年を迎えて

update:2012.4.5

 Phoenixから夜行便で、ニューヨークに着いたのは金曜日の早朝でした。今年は例年になく暖かい冬で、雪がほとんど降っていないニューヨークやNew England地方ですが、朝の冷たい空気は、Phoenixの暖かさに慣れた身体に、しっかりと“冬”を感じさせる寒さでした。それでも、1年中軽装で過ごせるアリゾナ州の生活から抜け出して、久しぶりにロングブーツや帽子、レザーコートで冬を楽しめるのはまんざらでもありません。

 普通ならこの時期はまだ雪があちらこちらに積もっていて、どんよりと冬空の広がる寒いオフシーズンなのですが、暖かい気温のせい、そしてやっと上向きになってきたアメリカの経済状況もあるのでしょうか、マンハッタンはどこに行ってもたくさんの観光客であふれていました。

 旅の初日、この日はローアーマンハッタンにあるあの同時テロ事件の911 Memorialに行きました。

▲写真1

 タイムズスクウェアのあるミッドタウンから地下鉄E線の現在の終点World Trade Centerで降り地上に上がると、そこは、あのテロ事件でも残ったセントポール教会の横で、新しいWorld Trade Centerビル群の建設現場の真正面になります(写真1)。

 新しい高層ビルの1つは、ガラス面に近隣のビルや建設用のクレーン車などを映し出しています。まだまだ完了までには時間がかかりそうですが、あえてまたさらに高層のタワーを建設することで、テロには決して屈しないという態度を示しているように感じます。

 崩壊した南北のWorld Trade Center跡地にこの911 Memorialはあります。去年の10周年に合わせて、その一部がオープンになりました。911 Memorialを囲んで新しいビルが建設中なので、この911 Memorialも公開になっていますが、実際に見学をするには事前にチケットをオンラインで手配する必要があります。公式サイトから、日時を予約して手配をしたチケットをプリントアウトして持参します。

▲写真2

 この日、予約時間に合わせて911 Memorialに行きましたが、すでに長蛇の列(写真2)。列に加わると、そこからチケットを持っていることを何度かチェックされました。しばらく行くと、一度ビルの中に入り、そこで空港で行われるようなセキュリティチェックを通ることになります。ここでは、帽子やマフラー、ジャケットも脱ぎ、持ち物すべてX線チェック、そして人間ももちろん金属探知機のゲートでのチェクを受けます。本当に空港と一緒です。このチェックが済むと、また外に出て列はしばらく続きます。そして、ビル建設中の現場囲いを通り抜けると、目の前に911 Memorialが突然広がります。

▲写真3

 芝生の広がる911 Memorialには、水が滝のように4面を流れ落ちる2つのプールがあります。ノースプールとサウスプールは、それぞれノースタワーとサウスタワーのあった場所に作られています。これらのプールの周りを囲むように、ブロンズの欄干があり、ここには、それぞれのタワーで亡くなった犠牲者を含む、このテロ事件でなくなったすべての犠牲者の名前(最初に現場に駆けつけた消防士や警察官、4つの飛行機の乗客と乗務員、ペンタゴンでの犠牲者、そして1993年に起こったテロ爆発事件での犠牲者6名も含まれています)が彫り込まれています(写真3)。

 止まることなく流れ落ち続け、でもとても静かに水をたたえたメモリアルプールは、本当に美しく荘厳な記念碑です。

▲写真4

 サウスプールの後方には、2つのタワーの崩壊時にも無傷で残ったセントポール教会の尖塔が見えます。実際にこの場に立つと、この教会がどれだけタワーの近くにあったのかがよくわかります。当時は、この教会の周りを囲むフェンスに行方不明者を探すたくさんのメモや写真がフェンスを覆い尽くすように貼られていました。これらの写真などは、新しくできる博物館に展示される予定です(写真4)。

 このプール以外に、今まだ建設中の911記念博物館があります。ここには、崩壊時にかろうじて残ったノースタワーの正面にあった金属製の三又の柱の一部がそのままの形で展示されるそうです。また、元々このWorld Trade Centerプラザにあったたくさんの樫の木のうち、ダメージを受けたものの、なんとか生き延び、その後セントラルパークに移されてみごとに再生したサバイバルツリーと名の付けられたホワイトオーク(白樫の木)も大きく枝を伸ばしています(写真5)。

▲写真5

 あれから10年、やっとここまで来たといえるのでしょうか。すべてのビルが完成し、この911 MemorialもWorld Trade Centerプラザとして自由に人々が行き来できるようになることを、早くそうなることを願うばかりです。

 911は10年という年月が経ちましたが、でも日本の311からはやっと1年が過ぎたばかりです。日本時間の3月11日に合わせて、アメリカ時間10日の土曜日には、ニューヨーク市内の教会で震災追悼式が行われることを、TVのニュース番組で何度も放送していました。またこの日は、1年前の震災のようすをまとめた特別番組がヒストリーチャンネルやCNNなど、いろいろなチャンネルで報道されていました。ニューヨークタイムズ紙でも、ある海岸沿いの町の1年前のこの日と1年後の今の状況の写真を並べ、復興は進んでいるのか……という内容の記事を掲載していました。

▲写真6

 今回の旅をプランしたときから3月11日には、ある場所に行こうと決めていました。それはセントラルパークにあるStrawberry Fieldsです。ジョンレノンが暗殺されたダコタハウスの前のセントラルパークの入り口からちょっと入ったところにある、このStrawberry Fieldsには、ジョンレノンの曲『イマジン−IMAGIN 』の記念碑があります。地面に丸くタイルが貼られ、その真ん中に“IMAGIN”と書かれたとてもシンプルな記念碑ですが、反戦と平和を歌った彼の願いは、今も変わらず力強いメッセージを放っています。この日もたくさんの人々が訪れていました。さまざまな言語が飛び交っていましたが、きっとそれぞれの思いでこの場所に集まっていたのではないかなと思います(写真6)。

 3月11日の大震災1年目の記念日に、このイマジンの記念碑の前で、震災の犠牲者を思い、そして少しでも早い災害地の東北、そして福島周辺の復興を心から願う、それは私なりの追悼式でした。

Pray for my country,Japan!

●写真1
地下鉄の駅から地上に上がってきたところから見える建設中の新しいWorld Trade Centerタワー

●写真2
911 Memorialの入り口で並ぶ見学者の列

●写真3
水の流れ落ちるサウスプール

●写真4
建設現場の向こうに、無傷で残ったセントポール教会の尖塔が見える

●写真5
建設中のミュージアム

●写真6
Strawberry Fieldsにある“IMAGIN”の碑

▼ 911 Memorialの見学について
911 Memorialの公式サイトから見学したい日時を選択してチケットをプリントします。現在のところ基本的にチケットがないと見学できません。チケット代は基本的に無料ですが、メモリアル建設資金として寄付をすることができます。 http://www.911memorial.org/





● 鈴木淑子 ・・・ (コンサルタント & フィットネスインストラクター)
 1980年代から15年強、日本のパーソナルコンピュータ、ソフトウェア業界の成長とともに自身も仕事中心の毎日を過ごす。新世紀を前に再渡米。2003年にMBA課程修了。 2005年秋に延べ9年慣れ親しんだNew England 地方からアリゾナ州に夫&猫ともに移動。現在Phoenix市に在住。